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目次
澁谷聡一 医師
「生まれる前から命を支える医療がある」——FMF胎児クリニック東京ベイ幕張で胎児医療に携わる小児外科医・澁谷聡一先生は、生まれてくる命を見つめながら、日々、患者さんとご家族に寄り添っています。今回は、小児外科医として歩んできた背景や、胎児医療という分野の魅力と可能性、「これから胎児医療に関わりたい」と考えている医師に向けた熱いメッセージもお聞きしました。
医療関係者がいない家庭で育ったため、もともと医療というものにはイメージがありませんでした。学問的興味から医学部に進学し病院実習を回る中、患者さんに対する責任を背負う一方で自分の技術で「治せる」という実感を得られる外科学に強く興味を持ちました。
学生の頃の外来見学の際、「横隔膜ヘルニア」の胎児診断を受けたお母さんに先生が「この子は生まれてきても助からない可能性が高い」と話すのを見ました。その光景が非常に衝撃的で、「なぜ助けられないのか」「何かできることはないのか」と強く思ったことを覚えています。
このときの疑問や悔しさが、後に胎児医療を意識する最初のきっかけだったと思います。
ロンドンにある、グレート・オーモンド・ストリート病院という世界屈指の小児病院に留学をしていました。その際、脊髄髄膜瘤に対する胎児手術を見学させてもらったのですが、子宮の中の赤ちゃんに対して手術が行われる様子を目の当たりにし、「本当にこんなことができるのか!」と感動しました。
日本でも胎児治療を進めるべきだと確信した瞬間です
胎児医療に限った話ではありませんが、海外では臨床と研究を同時に進めていく姿勢がある一方、日本は新規の治療に関して慎重になる傾向があるということが違う点です。もちろん医療の安全性を確保するという意味では慎重であるべきですが、胎児医療の分野においては海外のエビデンスに基づいて広げられる余地があると感じます。
赤ちゃんが生まれる前からご家族と向き合うことの大切さを、強く感じました。これは、胎児医療の大きな特徴だと思います。
一般的には小児外科医は出生後の赤ちゃんに関わることがほとんどですが、胎児医療では妊娠中からご両親の不安や葛藤に寄り添うことができます。出生前から疾患の理解と児への愛着形成を促すことに関わることは、胎児医療の重要な役割だと思います。
私は月に一度、当クリニックで診療を担当しています。スタッフの方々と情報を共有し、超音波検査に立ち合い、所見に関して話し合いをします。検査後はその場でご家族に疾患の病態や出生後に予想される経過などに関して説明し、必要があれば大学病院と連携*を取ることもあります。
初対面の患者さんであることが多いので、その中でできる限り理解を深めていただけるように説明することを意識しています。不安を煽ってもいけないですし、楽観的にさせ過ぎてもいけない。それが難しいと感じます。
胎児医療の発展は、赤ちゃんだけでなくご家族にとっても大きな意味があります。出産前から病気について知り、心の準備ができていれば、出生後の治療やケアも滞りがなくなります。ご家族が疾患を理解することはスムーズな受け入れにもつながると感じています。
日本にはまだ制度的な壁や、海外との生命倫理に関する考え方の違いなどがあります。現在のところ胎児手術が可能な施設は限られており症例も多くありません。小児医療に関しては集約化の議論もあり、現場だけでは解決できないことが多いと思います。
表現は難しいですが、近年、出産や子育てにできる限りリスクを避ける方が増えているように感じます。小児外科医として伝えたいのは、全ての先天性疾患の予後が悪い訳ではなく「手術で治せる病気がたくさんある」ということです。
仮に異常が見つかっても、治療や手術によって、自立した生活を送ることも可能になることが多いです。そのことを正しく伝え、安心して妊娠・出産に臨めるシステムを築きたいと考えています。
胎児医療に関する資格取得を目指す方は、まず「なぜその資格を取りたいのか」を自分の中で明確にすることが大切だと思います。私自身もそうでしたが、単なるスキルアップではなく、目の前の赤ちゃんやご家族に安心を届けるために必要な資格であるという目的意識を持ってほしいと思います。
発生学の基礎を理解しておくと、診断や病態の理解が格段に深まります。さらに、自分の診断や知識が、そのままご家族への説明になることを意識しながら学ぶことが重要です。試験のための勉強ではなく、現場で活かせる知識を積み重ねていく視点を大切にしてほしいです。
そして、診断技術だけでは不十分であって、結局患者さんと向き合うときに必要なのは「伝える力」です。これは本当に大事。どれほど正確な情報を持っていても、わかりやすく伝えられないと意味がありません。胎児医療の現場で患者さんと向き合う医師にとって、伝える力こそが最も重要な要素のひとつだと感じています。
初めてお会いする患者さんは、多くの場合、不安を抱えて来院されます。私が意識しているのは、「ゆっくり、安心できる空気をつくること」です。
どれだけ医学的に正しい説明をしても、患者さんやそのご家族が受け入れられる状態でなければ伝わりません。そのため、ご家族の理解度に合わせて話す言葉を変え、図や例え話を交えながら説明するようにしています。例えば、「胸とお腹の仕切りに穴が開いていて…」というように、紙に絵を描きながら説明すると、ご家族も「ああ、そういうことか」と納得されることが多いです。
発生学は非常に興味深い分野で、私もロンドン留学中に重点的に学び直しました。近年では、再生医療による臓器再生の研究が進んでいますが、これらも発生学の知識が基礎となります。
細胞が臓器へと分化していく過程は非常に精巧で美しいです。また、機能美の塊である臓器を手術で目にするたびに「これは奇跡だ」と感じます。
胎児診断の現場では、妊娠12週ほどの段階で、臓器が形成されていくプロセスを実際に観察できます。そのプロセスの中でエラーが起こって病気になるわけですが、その過程を知っているからこそ、手術のときに「どこを治せばよいのか」が自然と見えてきます。発生学の知識は、先天性疾患に対する手術を理解する上で欠かせません。
はい。赤ちゃんに異常が起こることについて、先々代の教授が「これは神様の忘れ物なんだよ」と言っていました。
赤ちゃんがこの世に生まれてくるとき、神様がうっかり何かひとつ大事な手順を忘れてしまった——そんなふうに考えると、私たちの手術は、その“忘れ物”を赤ちゃんへ届けてあげることだとも言えるかもしれません。
ひと言でいえば、粘り強い人です。胎児診療は不確実性が高く、予想どおりに進まないことも多い分野です。そのため、どんな状況でもあきらめずに「どうしたら助けられるか」を考え続けられる粘り強さが必要ですし、そういった姿勢を持つ方は、きっと大きく成長できると思います。
今は医師の働き方も多様化し、リスクの低い働き方を好む若手医師も多く、小児や外科といった診療科を志す人は減っています。胎児医療は責任を伴う分野ですが、まだまだ未解決な部分も多くこれから成長していく分野です。「生まれる前の命を救う」ことは未来を作ることです。ぜひ飛び込んでほしいと願っています。
自分の努力が誰かの為になった瞬間、悩んできたことが報われます。悩みがなければ人は成長しません。悩みながらも行動し続けることが大切だと思います。
私自身、「自分にしかできないことは何か」と問い続けてきた結果、その答えの一つが「生まれる前から命を支えること=胎児医療」でした。出会いの中にキャリアを進めるヒントがあるものです。チャンスを見逃さずに、掴んでいってほしいですね。
病気を持って生まれてくることがマイナスにならない、適切な治療を選択できる医療体制をつくる。それが、私の目標です。手術で助けられる命があります。そのことを不安を抱えたご家族に伝えられるように、これからも胎児医療に携わり続けたいと思います。
未来の医療現場を担う
新卒・第二新卒の皆さんへ
生まれる前の赤ちゃんを診る「胎児医療」は、日本ではまだ専門家が少ない分野です。しかし、海外では一般的であり、超音波検査や遺伝カウンセリングを通じて胎児の健康を支えています。
この仕事に就く「これまで胎児医療を知らなかった医療従事者」たちは、学び続けられる環境や専門性を深められる経験、そして何よりチームで命を支えるやりがいに魅力を感じ、成長していきます。あなたの情熱を「-1才からの医療」に向けてみませんか。