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胎児超音波検査を行う
超音波検査士に必要な資質

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目次

はじめに:NT測定を行う胎児医療とは

胎児医療とは、妊娠初期から胎児の状態を評価し、「-1才の命を支える」大切な医療です。日本では、胎児を専門とする医療従事者が圧倒的に足りていない現状がありますが、この分野で働くことは命の始まりを支える重要な役割を担うことでもあります。

医師をはじめ、遺伝カウンセラーや超音波検査士、看護師など、それぞれの専門性を活かして連携するチーム医療が実践されています。

NT測定に必要なスキルと
認定資格

超音波検査士が担う業務の中でも、妊娠11〜13週に行うNT(頸部の皮下の厚み)測定は、胎児の染色体異常や心疾患などのリスクを推定するうえで重要な項目です。正確なNT測定には、描出・計測のスキルだけでなく、検査の目的と限界を妊婦に適切に伝える力も求められます。

正確な描出技術が求められる

NT測定は、わずかなプローブ角度や胎児の姿勢の違いで測定値が変動する繊細な検査です。正しい断面を安定して描出し、国際基準に沿って正確に計測できる技術は、診療判断の前提情報としての再現性を担保するうえで重要です。

結果をどう伝えるかも大切

測定されたNT値に関する説明は医師が行いますが、検査中にも不安を抱く妊婦さんは少なくありません。「今は赤ちゃんの首の後ろを測定しています」「結果は医師から詳しくお伝えしますね」など、検査の目的や流れを伝える一言は、過剰な不安の予防につながります。

国内での資格制度

日本国内で超音波検査士として認定されるには、「日本超音波医学会の認定制度*」を通過する必要があります。

この制度は、胎児領域だけでなく各診療分野においても、描出技術の一定基準を保証する資格として位置づけられています。

*参照元:公益社団法人 日本超音波医学会「認定資格/受験資格(検査士)について」(2025年6月調査時点)(https://www.jsum.or.jp/members/professional/jukenshikaku_kensashi/

胎児医療で求められる
超音波検査士の専門性

超音波検査士には、精度の高い画像取得と計測だけでなく、チーム医療の一員としての情報共有・報告の役割も期待されます。検査中の所見が方針決定に影響する可能性があるため、定められた条件下で安定した画像を提供するスキルと、医師が判断を行いやすい情報整理力が求められます。

NT測定だけにとどまらない
幅広い技術

胎児医療に携わる超音波検査士は、妊娠週数に応じて異なる臓器評価を行います。NT測定に加え、胎児心臓、脳、腎臓、四肢、胎盤、羊水、血流評価など、診療に直結する構造情報を得るための観察技術が求められます。そのため、週数・条件に応じた描出方法を柔軟に選択できる適応力が重要です。

妊婦さんの検査への理解と納得を促す声かけ

妊婦さんの緊張や質問に対応する場面では、検査内容を簡潔に説明し、検査の透明性を保つことが大切です。「心臓の動きを確認しています」「ここでは臓器の位置を見ています」など、医療的判断には触れずとも目的を伝えることで、検査への理解につながるでしょう。

FMF認定ライセンス取得の要件

より高度な専門性を目指す際には、FMF認定ライセンスの取得も検討すると良いでしょう。FMFライセンスは医師だけではなく超音波検査士も取得可能で、胎児超音波検査の分野で技術力が国際的に認められる証になります。

取得までの流れ

  1. オンライン講義(e-learning)受講
  2. 英語によるオンラインテスト
  3. NT画像や鼻骨の描出の症例提出
  4. 承認後、FMF公式サイトで認定者として登録

FMFライセンス取得により、チーム内で共通基準に基づいた検査報告が可能となり、症例検討や所見共有において再現性のある情報提供者としてのスキルも高まります。より詳しく知りたい方は、以下のページもご参考ください。

超音波検査士のキャリアアップ

胎児医療の現場で経験を積むことは、超音波検査士としてのスキルだけでなく、キャリアそのものを大きく広げるきっかけにもなります。

教育・指導役としての活躍

経験を重ねることで、医師や他職種との所見共有や検査相談の場面が増えていきます。判断は医師が行うものですが、判断の前提となる画像情報の精度を担保する技術が評価される場面も多くなります。

また、難しい症例を解説した学会発表や、特定の検査技術を紹介する症例報告に参加することができます。どのように画像を描出したか、難しい症例をどう解釈したかを他施設の超音波検査士と共有することは、自分自身の成長につながるだけでなく、胎児医療での後進育成にも貢献できます。

国際的な視野でのステップアップ

後輩技師や新人スタッフへの教育・指導も、経験を重ねた超音波検査士が担う役割の一つです。自分が学んできたことを言語化し、次に伝えることは、技術と知識の定着を助け、チーム全体の実行力を支える要素にもなります。

また、FMF認定ライセンスの取得や検査実務の積み重ねを通じて、国際学会への参加や海外の胎児医療施設との技術交流に関わる機会を得ることもあります。国内外の臨床現場を比較し、検査基準や描出技術の相互理解を深めることは、胎児医療における自身の専門性を広げるうえでも有益な経験となります。